研究概要 |
本研究では,プラズマ技術の医療・バイオ応用として,プラズマ照射を用いた微生物及び細胞の活性制御を目的としている.具体的にはプラズマ照射を行う事で細胞増殖の促進・抑制を行い,動物細胞では移植分野での応用を,植物細胞では収量の増加,発芽時期の制御等を実現する.本年度は,開発した大気圧プラズマ照射装置を用い,一度に複数の実験条件を実現できるコンビナトリアルプラズマ照射法を用い,活性種の濃度空間分布計測,またコンビナトリアル照射法を植物の成長促進に適用し,最適な照射条件の導出を行った.最後に試薬を用いた植物細胞内の成分調査を行い,プラズマ照射が植物に与える影響を調査した. 実験には作製した大気圧DBD電極を用いた.使用した種子はカイワレ大根である.種子の位置を変えて配置することで,放電により生じる活性種量を空間的に変化させ種子へ照射した.結果,照射位置で長さに差が見られ,最大2.5倍成長が促進され,照射効果は最終的に1週間持続した.また,長さが最大となった位置は放電電極直下でないとことから,放電によって生じた活性種が成長促進に寄与していると考えられ,活性種量を制御することにより,成長を制御できることがわかった. 次に,放電によって生じる活性種と種子に含まれるタンパク質が反応し,内部で酸化還元反応が起き,酸化ストレスが生じる可能性を考え,生体内で酸化ストレスに対して恒常性の維持において重要な働きを行っているタンパク質,チオレドキシン,グルタチオン中のSH基量がプラズマ照射により変化するか調査するために,プラズマ照射時間をパラメータとして,照射前後のSH基量を試薬を用いて計測した.結果,長さとSH基の量には良い相関が見られた.よって,プラズマ照射によってカイワレ大根の成長が促進する機構の一つは,プラズマ中の活性種が酸化ストレスとして種子に作用することであると考えられる.
|