研究概要 |
本研究の目的は次の3点である。第1の目的は4要件相互の関連の様相が実際の対人場面における認知・行動に与える影響を明らかにすること、第2の目的は4要件理論に基づく主張性トレーニングを確立すること、第3の目的は主張性研究領域・社会的スキル研究領域における、主張性の4要件理論の理論的位置づけを明らかにすることである。なお本研究では、主張性を「(1)素直な表現」「(2)情動制御」「(3)他者配慮」「(4)主体性」の4つの要件の視点から捉える。 平成22年度は、第1の目的のための質問紙調査と第2の目的のためのトレーニング・プログラムの改編、第3の目的のための文献研究およびデータの再解析を実施した。 1.大学生280名に対して質問紙調査を行った結果、「(3)他者配慮」が対人場面における相手への敵意的認知と関連することが見いだされた。調査を通して、今後の実験でも使用しやすい4要件尺度の簡略版が作成された。 2.すでに作成されていた「(3)他者配慮」トレーニングのプログラムを大学生の集団に適用しやすく改編した。また、「(1)素直な表現」の内容を含むプログラムを作成し、大学生に対して心理学の授業内で試行した。その後、参加者の感想などを受けてプログラムの修正を行っている。 3.リーダーシップと主張性に関する研究(Ames,2009など)を概観し、主張性と効果的なリーダーシップとの間にも曲線的な関係が見られることを見いだした。研究代表者がこれまでの調査で得たデータに、先行研究で使用された分析方法を適用して再分析を行ったところ、一部の要件と共感性・シャイネスとの間に曲線的関係が存在しており、分析方法を変えてもこれまでの研究と共通する知見が得られることを確認した。 4.大学生68名に対して質問紙調査を実施し、昨年度実施した主張性の4要件と生活スタイルや自己との関連を捉える調査の追加データを収集した。
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