研究課題/領域番号 |
10J06987
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横田 裕輔 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ハイレートGPS / 余効すべり / 震源過程 / 波形インバージョン / スロースリップ現象 / バックスリップ / 東北地方太平洋沖地震 / 余震活動 |
研究概要 |
本研究では、地殻内地震の本震から余震活動や余効変動へと移行する時間発展の様子をハイレートGPSを用いた震源インバージョンによって解析し、余効変動への進展の様子を明らかにする。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震に関して、その本震の震源過程とバックスリップ・余効すべりの詳細な解析を実施する。これらの解析から、東北沖のプレート境界に関する固着とすべりの時空間発展の描像を得る。さらに一連の時空間発展を再現可能な物理モデル、シミュレーションについて議論を行う。このような解析と議論によって、地震の始まりと進展だけではなく、地震の終焉とその後の中・長期的な時空間発展の概観を知ることを目的とする。 本年度は、ハイレートGPSデータを用いて、2008年岩手・宮城内陸地震(Mw:6.9)について余効すべりの発展過程について詳細な解析を行った。また、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw:9.0)について強震波形データを用いたインバージョンを行い震源過程を推定した。さらにスタティックGPS、遠地実体波、津波データを加えたジョイントインバージョンによって震源の破壊過程の全容を明らかにした。 また、過去のGPSの1日サンプルデータについて過去の研究より詳細に時系列解析を行い、北海道から房総沖にかけての太平洋プレートの沈む込み帯におけるバックスリップ過程の詳細な時空間発展を調べた。海底地殻変動データも含めた解析も実施し、同じデータセットを使った本震の解析結果と非常に似た領域が固着を蓄積し続けてきたことも明らかにした。さらにハイレートGPSデータを用いて、地震直後に余効すべりが発生していることを確認した。今後、詳細な本震の震源領域・地震前のバックスリップ領域・地震後の余効すべり領域を比較し、一連の時空間発展を再現可能な物理モデルについて議論を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2011年東北地方太平洋沖地震の発生に伴い、当初の計画にはなかった非常に重要なデータが得られた。その本震時の破壊過程に関する強震動・遠地実体波・GPS・津波の4種類のデータセットを使用した解析を重点的に実施した。また過去のGPS時系列データを使用した地震前のバックスリップ過程、ハイレートGPSを使用した地震後の余効すべり過程の解析も実施しており、予想外の研究の進展と期待通りの研究の進展の2側面が見られた。総合的に見て当初の計画以上の進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
2011年東北地方太平洋沖地震に関して、その本震の震源過程とバックスリップ・余効すべりの詳細な解析から、東北沖のプレート境界に関する固着とすべりの時空間発展の描像を得た。今後、さらにGPSデータの詳細な解析を実施し、余効すべり現象の発展や余震との関連性について議論・考察することを予定している。また、明らかになった詳細な本震の震源領域・地震前のバックスリップ領域・地震後の余効すべり領域を比較し、一連の時空間発展を再現可能な物理モデル、シミュレーションについて議論を行う予定である。このような解析と議論によって、地震前の固着状態から地震の進展、さらに地震の終焉とその後の中・長期的な時空間発展の概観を理解する。
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