北海道大学の田中秀和准教授と共同し、帯電する塵粒子の合体成長に伴うサイズ分布の進化に対する詳細な数値シミュレーションを行った。その結果、ある条件のもとではサイズ分布全体の進化が停止することを発見した。この結果に基づき、惑星形成領域の大部分において、微小なダスト粒子の成長が禁止されることを世界で初めて明らかにした。この研究成果は、本研究の注目する塵粒子の電気力学的進化が微惑星形成過程を決定づけることを証明するものである。本研究成果をまとめた論文2編を筆頭著者として執筆し、国際学術誌にて公表した。 海洋研究開発機構の廣瀬重信主任研究員と共同し、原始惑星系円盤(星周ガス円盤)の磁気流体力学的乱流に対する帯電塵粒子の影響を、数値流体シミュレーションによって定量的・体系的に調査した。その結果、塵粒子が周囲の磁気乱流を安定化することで、塵粒子自身の衝突速度が付着合体可能な速度にまで引き下がることを明らかにした。この結果は、これまで微惑星形成に対する障害と考えられてきた「乱流中での塵粒子の衝突破壊」が回避可能であることを意味する非常に重要な結果である。本研究成果の一部をまとめた論文1編を筆頭著者としてすでに公表し、成果のより詳細に関する論文を筆頭著者としてまもなく投稿する予定である。 さらに、北海道大学の田中秀和准教授と共同し、塵粒子集合体の構造強度に関する理論モデルを完成させ、これを用いて塵粒子の集団の成長および内部構造進化の統計的シミュレーションを実施した。その結果、研究計画において期待した通り、従来の微惑星形成モデルの理論的問題点の1つであった「塵粒子の中心星への摩擦落下」が、塵粒子集合体の成長に伴う低内部密度化の効果によって解決されることを証明した。現在、本研究成果に関する論文を筆頭著者として執筆中である。
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