研究概要 |
円盤ガスの磁気乱流が誘起する塵粒子集合体の衝突破壊は、微惑星形成に対する重大な障壁の1つである。しかしながら、微小な塵粒子が豊富に存在する状況下では、塵粒子の帯電によって磁気乱流は安定化されることが知られている。したがって、微惑星形成経路の解明のためには、微小な塵粒子の存在とそれによる乱流の安定化を正しく考慮することが非常に重要である。 本研究員は、海洋研究開発機構の廣瀬重信主任研究員と共同し、磁気乱流の強度が微小な帯電塵粒子の存在量と円盤を貫く磁束量の関数としてよく記述できることを磁気流体シミュレーションから解明した(Okuzumi&Hirose 2011)。さらに、得られた経験則を利用して、塵粒子集合体の衝突に伴うサイズ分布の進化を磁気乱流の進化と同時に追跡するという世界で初めての数値シミュレーションを実施した。この結果、円盤を貫く磁束が小さい状況下では、微小な塵粒子が磁気乱流を十分に安定化し、より大きな塵粒子集合体を大規模な衝突破壊の危険から防ぐことを明らかにした(Okuzumi&Hirose,論文執筆中)。このことは、塵粒子の広いサイズ分布を正しく考慮することが微惑星形成の理解にとって本質的に重要であること、そして原始惑星系円盤を貫く磁束の量が円盤内での微惑星形成に決定的な影響を与えることを示すものである。 また、受入研究者である犬塚修一郎教授と共同し、磁気乱流に付随する電場が塵粒子の帯電状態および円盤の電気伝導度に及ぼす影響を解析的に調べた。その結果、現実的なパラメータの範囲内で電場による円盤ガスの絶縁破壊が起こり、塵粒子の帯電量および円盤の電気伝導度が劇的に上昇する可能性を発見した(Okuzumi&Inutsuka,論文執筆中)。この結果は惑星形成環境に対する従来の理論的理解の大幅な変更を迫るものである。
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