研究概要 |
本年度は大きく分けて有機電界効果トランジスタ(OFET)と有機太陽電池(OPVC)に関する研究を行った.以下にそれらの結果について簡潔に述べる. (1)OFET動作状態におけるチャネル形成過程の観測 本年度の5月にドイツのアウグスブルク大学を訪問する機会があった.この段階ではまだOPVCに関する研究に着手していなかったので,OFETに関する研究を行った.ドレイン電圧を印加した状態でCapacitance-Voltage(C-V)測定を行い,低ノイズでFETがOff状態からOn状態に遷移する際のチャネル形成過程を観測することができた,現在この結果を解析し,論文にまとめている最中である. (2)変位電流測定法(DCM)によるOPVCの動作メカニズムの解明 特別研究員の研究テーマとして,OPVCにおけるキャリア生成機構の解明を掲げている.本年度の後期から,実際に太陽電池を作成し,DCMという手法(過渡応答を含めたキャパシタンスの電圧依存性を調べることができる)を適用して基本特性を調べた.素子構造は典型的なITO/CuPc/C60/BCP/Alであるが,開放電圧以下で素子内にキャリアの偏り(もしくは蓄積?)に由来するような構造が現れた.一方ケルビンプローブ(KP)によって,C60上でBCPが巨人表面電位(GSP)を形成することもわかった.有機電界発光ダイオード(OLED)においてはこのGSPとホール注入開始電圧が密接に関係していることが報告されている.今後は観測されたDCM構造とGSPの関係を正しく理解する必要がある.
|