研究課題/領域番号 |
10J07129
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
掛布 真愛 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 細胞遊走 / 微小管 / +TIPs / CLIP-170 / IQGAP1 |
研究概要 |
遊走細胞は進行方向に対して前後軸を形成し、これに沿って細胞骨格の分布や細胞形態は非対称性を示す。本研究では、伸長する微小管の先端に濃縮する+TIPs(CLIP-170やEBsなど)による微小管の配向を制御する分子機構の解明を目指した。リン酸化によるCLIP-170の活性制御機構の解析を行い、CLIP-170がリン酸化されると、微小管構成成分であるチューブリンや他の+TIPsであるCLASP2との結合が減弱することを見出した。in vitro実験計において、リン酸化型CLIP-170は、コントロールに比べ微小管をより不安定な方向にダイナミクスを変化させた。このことは、細胞内でCLIP-170のリン酸化状態が調節され、CLIP-170の活性が制御されていることを示唆している。一方、CLIP-170のダイナミクスやそのリン酸化状態に影響を与える分子をスクリーニングし、新たにPlk1を同定した。in vitroでPlk1がCLIP-170を直接リン酸化すること、CLIP-170のリン酸化が細胞分裂時に上昇し、この一過的なリン酸化型CLIP-170の上昇がPlk1阻害剤やPlk1siRNAで減少することから、分裂細胞内でPlk1がCLIP-170をリン酸化し、CLIP-170の活性を制御していることが明らかになった。また、+TIPsの主要制御因子EBs(EB1とEB3)のアフィニティーカラムクロマトグラフィーを行い、LC-MS/MSによって結合蛋白質を網羅的に同定した。いくつかの候補蛋白質の細胞内局在を検討したところ、数個は伸長する微小管先端に特異的に濃縮することが明らかになった。詳細な性状解析は進行中だが、EBsはこれまで同定されている以外の+TIPsも微小管先端にリクルートし、微小管ダイナミクスやその配向を決定していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、スクリーニング実験(RNAi、阻害剤、アフィニティーカラムクロマトグラフィー)で微小管の配向を制御する候補分子を同定し、cell-free実験系で性状解析を進捗させている。また、細胞内での解析も予定通り進んでおり、微小管ダイナミクスや配向を制御する分子機構を解明しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
EBs新規結合蛋白質に関しては、現在詳細な性状解析を細胞内とin vitro実験系で遂行しており、これを完遂させる。Plk1によるCLIP-170のリン酸化が細胞分裂に必須であるという予備的な知見を得ており、これを完遂させることでリン酸化によるCLIP-170の活性制御機構を解明する。in vitroでの微小管捕捉機構の解析は、使用するチャンバーの品質が不安定なため、製作工程を見直し品質を向上、均一化することで解析を完遂する。
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