本研究では、伸長する微小管の先端に濃縮する+TIPs(CLIP-170やEBsなど)による微小管の配向を制御する分子機構の解明を目指した。今年度、抗リン酸化CLIP-170抗体を作製し、Plk1によるCLIP-170リン酸化の時空間的な制御機構を解析した。細胞周期を同調させた培養細胞を用いて検討したところ、CLIP-170のリン酸化レベルが細胞分裂中期に高いことが明らかになった。このCLIP-170リン酸化レベルの上昇は、Plk1阻害剤やPlk1遺伝子発現抑制で減少したことから、CLIP-170は細胞分裂中期にPlk1によりリン酸化されることが示唆された。また、培養細胞を用いた実験やcell-free実験において、CLIP-170のPlk1によるリン酸化はCLASP2への結合能を減弱させた。細胞分裂中期には紡錘糸の微小管が染色体に付着し、染色体が赤道面に整列する。CLIP-170の遺伝子発現を抑制すると、この染色体の整列が乱れることを見出した。 さらに、レスキュー実験によりCLIP-170のリン酸化が染色体の整列に必須であることを見出した。以上の結果から、CLIP-170は分裂中期にPlk1によってリン酸化されることで、CLASP2と協調し、染色体の整列に重要な役割を果たしていると考えられた。 一方、EB結合蛋白質として同定した蛋白質を培養細胞内に発現させ、その挙動を観察することで複数の新規+TIPsを同定することに成功した。Ce11-free実験において、それら候補蛋白質はEB依存的に微小管先端に濃縮することを見出した。詳細な解析は継続中だが、EBをコアとした蛋白質問相互作用ネットワークが微小管配向決定を担っていることが強く示唆された。
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