研究概要 |
特徴的な代替繁殖戦術とそれに関連した雄の種内多型を持つヤリイカ類を用い、個体の各形質(精子の形態と受精能力、精莢の形態、精巣への投資量)が繁殖成功に与える影響とそのメカニズムを解明することを目的とした。類似した代替繁殖戦術をもつが、繁殖生態が若干異なる日本・南アフリカ・カリフォルニアに生息する3種のヤリイカについて、雄の繁殖形質にみられる多型現象とDNA父性判定により雄間の受精成功の偏りを調べた。 北海道沿岸で漁獲されたヤリイカ個体を用い、精子の顕微鏡撮影・画像解析により精子頭長・鞭毛長を計測した。その結果、大型雄と小型雄間で精子の形態が異なることを明らかにした。また千葉県沿岸より生きたヤリイカを入手し、顕微鏡動画撮影により精子遊泳速度・遊泳軌跡を解析した。また、人工授精方法を確立し形態の異なる2タイプの精子がともに受精能力を持つことを確認した。得られたデータから論文を執筆した(投稿中)。国際精子学シンポジウム(6月、沖縄)にて国際学会発表を行った。 10月~3月は英国Royal Holloway University of London, Molecular Ecology Groupに滞在し、海外野外調査、採集標本の遺伝子解析を行った。南アフリカ共和国にて3週間南アフリカヤリイカ(11月)、アメリカ合衆国にて2週間カリフォルニアヤリイカについて野外調査を行った(2月)。それぞれの種について、繁殖ペア・卵の採集、漁獲採集標本からの形態計測を行った。南アフリカで採集した卵を用いDNA父性判定を行ったところ、複数雄が一つの卵塊に関与していること、父性を占める割合が個体により大きく異なることが明らかとなった。
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