研究課題/領域番号 |
10J07267
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相良 剛光 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 蛍光プローブ / 分子集合体 / 超分子化学 / 刺激応答性発光材料 / ミセル |
研究概要 |
申請者はこれまで、機械的刺激などの外部刺激により発光色が変化する刺激応答性発光材料の開発を行ってきた。発光色の変化は発光部位の集積構造の変化に基づいている。二種類以上の発光部位の集積構造を作り出すため、準安定相を誘起することが重要である。本申請研究では、これまでに申請者が得てきた知見を元に、準安定な集合状態を利用した蛍光プローブの開発を行っている。 昨年度は、固相で機械的刺激に応答して紫外光照射下の発光色が黄色から緑色に変化し、さらに高湿度環境に置くことで元の黄色の発光色が回復するピレン誘導体の開発に成功した。しかし、このピレン誘導体から形成されるミセルは、水中では機械的刺激に応答せず、機械的刺激を感知する蛍光プローブには応用できなかった。そこで今年度は、水中で機械的刺激に応答し、発光色が変化するミセル状の分子集合体の構築を目指した。具体的には、昨年度に開発したピレン誘導体のデンドロン骨格の嵩高さを減らした分子を新規に設計・合成した。その結果、このピレン誘導体は水中でミセルを形成し、ガラス基板等に水中で吸着させた後に機械的刺激を加えると、発光色が黄色から黄緑色に変化することを見出した。また、固相では前年度に開発したピレン誘導体と異なり、機械的刺激を印加した後は水蒸気に暴露しても元の黄色の発光色が回復しないことがわかった。 一方で、機械的刺激を印加した際の発光波長のより大きな変化を狙い、発光部位をピレンからアントラセンに変更した分子も併せて設計・合成した。このアントラセン誘導体は固相で外部刺激に応答して三色の発光色変化を示した。これまでに、単一の分子のみで三色の発光色変化を示す例はほとんどなく、刺激応答性発光材料の観点から見ても、非常に興味深い材料を開発できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、水中でミセルを形成し、水中で発光色が変化するピレン誘導体やアントラセン誘導体を開発することが出来た。機械的刺激に応答して発光色が変化する蛍光プローブの創製に向けて、大きな前進であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究課題の最終的な目的である蛍光プローブとしての応用を目指し、実際に水中で機械的刺激に応答して発光色が変化するミセルを細胞等に導入する。具体的には、水溶性の高いポリエチレングリコールリンカーを用いて、前述のミセルを細胞膜表面のアミノ基等に共有結合を介して導入し、機械的刺激を感知できるレシオプローブになりうるかを検討する予定である。
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