研究概要 |
(1)自閉症児の顔刺激に対する認知特徴の基礎研究 自閉症児、または自閉症リスク児と定型発達児について、視線や表情を含む顔刺激に対する視線分析を行い,反応特徴を比較することにより、自閉症児の顔認知特徴を明らかにすることを目的とした。本年度は、1名の自閉症児についてのデータ収集により、自閉症児の顔刺激への認知傾向を明らかにする事が出来た。今後は定型発達と自閉症の参加児を増やしていくことで、自閉症児の認知的特徴を明確に定義することが出来、それによる早期スクリーニング開発に応用していくことが可能となる。 (2)自閉症児の早期スクリーニングの開発研究 10名の自閉症児に(1)ESCS (Mundy, 1995)による早期コミュニケーション評価と、標準化された発達検査と相関分析を行った。その結果、共同注意と言語の密接な関係が示された。また、自閉症児においてのみ、言語発達とコミュニケーション時のアイコンタクト率が負の相関を示したことから、言語と社会的な刺激への定位のコミュニケーションにおける機能が定型発達児と異なる可能性が示唆された。今後は、視線計測機器を用いて、顔刺激への視線パターンと各指標の相関分析の結果を示していくことで、早期スクリーニング開発に繋がっていくと考えられる。 (3)自閉症児への共同注意行動への介入プログラム開発研究 早期介入のプログラム開発に関連する介入研究を実施した。自閉症児が困難を抱えていると示されてきた始発型共同注意の1形態である社会的参照行動への介入研究がほとんど無かったため、3名の自閉症児に介入を実施した。その結果、3名とも社会的参照行動を学習し、さらに般化条件も満たすことが出来た。これまで自閉症児の始発型共同注意の介入研究では、般化、維持の困難が問題になっていたため、本研究の成果を従来の介入プログラムに加えていくことで、介入の成果をより継続させる可能性が示された。
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