研究課題/領域番号 |
10J07276
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
熊 仁美 慶應義塾大学, 社会(科)学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 自閉症 / 共同注意 / 早期療育 / 視線 / 社会的コミュニケーション / 応用行動分析 / 知能指数 / 前言語 |
研究概要 |
本年度は、2つの新たな研究を行なった。1つ目の研究は、自閉症児の視線認識に関する評価研究である。非社会的条件刺激、社会的条件刺激(3項関係)、社会的条件刺激(2項関係)の3つの条件を設定し、全ての条件において、登場人物が文脈に一致した視線の方向で行動する(相手の顔や事物を見る)correct動画と、文脈に不一致な視線方向で行動する(相手の顔や事物を見ない)in-correct動画を作成した。そして、各条件内で、correct動画とin-correct動画をセットで提示し、「どっちが変?」と質問し、参加児に選択をさせた。その正反応率を自閉症群と定型発達児と比較した結果、非社会的条件の結果は、定型発達と自閉症群で有意な差がなかったが、社会的条件においては、2項関係は0.5%水準で3項関係は0.1%水準でともに定型発達児よりも有意に低かった。この結果から、自閉症児は定型発達児よりも社会的場面における視線の認識に困難があること、さらに、物と人の2項関係よりも、物と人と人という3項関係における視線認識がより困難である可能性が示唆された。 2つ目の研究は、NPO法人と共同で行なった臨床研究である。本研究は、12名の自閉症児に対する早期集中療育の中で、参加児の発達がどのように変化していくか、また、参加児のプロファイルの関連を分析し、その発達のパターンを予測する因子があるかどうかを明らかにしていくことを目的とし、(1)半年経過時と1年後の発達指標の変化(2)その変化と、初期のプロファイルとの関連、を分析した。 その結果、平均知能指数は開始時から平均28.9の増加が示された。相関分析では、応用行動分析に基づいた療育の効果が、開始時の年齢に関係なく現れるということが示唆された。この効果のあり方は、開始時の生活年齢ではなく、発達年齢や、言語などより詳細なプロフィールとの関連も分析する必要を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が目的としている自閉症児の早期スクリーニングと早期支援という2つの観点から、計画をたて、研究を進めることが出来た。スクリーニングについては、視線認識の基礎研究を行い、薪たな知見を蓄積することができた。早期支援についても、NPO法人と連携して大規模な臨床研究を進めることが出来た。今後も、同時並行で基礎研究と臨床研究を進めていくことで、自閉症の包括的な早期支援につなげていくことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、本年度と同様に、基礎研究と臨床研究を並行してすすめていくことで自閉症の早期支援の包括的な知見を積み重ねる。また、NPO法人との連携も継続し、より多くの参加児に研究の参加をのぞむことができる。
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