研究課題
超金属欠乏星は初期世代の数発の超新星により形成されたと考えられ、その起源を知る事は、イコール初期世代星爆発メカニズムを知る事につながる。現在、大きな論点として、初期世代星は超新星として死ぬのか、極超新星として死ぬのか、ということがある。亜鉛、コバルトの再現から考えれば、初期世代星は極超新星として爆発するという説が有力である。しかし、全ての元素値が極超新星モデルで再現できるわけではない。本研究は超新星、極超新星イールドと超金属欠乏星の元素分布観測との比較から、初期世代星が超新星であったのか、極超新星であったのかに結論をつけることを目的としていた。本年度は、前年度までに準備を終えた元素合成コードと流体力学プロファイルを用い、13-50太陽質量の超新星、極超新星モデルのイールド計算を行った。さらに、超新星ニュートリノは超新星の流体力学にだけでなく、超新星で燃やされてできた原子核に衝突することで、新たな原子核を作り出す。前年度までに整備した最新のニュートリノ反応率を用い、本年度は、標準的なニュートリノエネルギー量を仮定した超新星イールドの計算も行った。これらのイールドと観測値との比較から、各元素についてどちらのモデルがより観測値に合致するかを議論した。また、さらにもう一つの論点として、原子核反応率による不定性が考えられる。今年度は異なる反応率のセットを適用して同様の計算を行い、反応率の違いによって、特に鉄族の元素にどのくらい影響が出得るかを議論した。さらに、今回どのようなモデルでも再現できなかったポタシウムについて、未だサーベイされていない領域にまで至る広範囲のパラメータサーチを行い、高密度陽子過剰な領域でのみ観測に見られるポタシウムと鉄の比を再現できることを明らかとした。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度までに開発・テスト計算したコードを用いて、当初計画していた、様々な質量、金属量、爆発エネルギーの超新星モデルについてニュートリノの寄与を含めた超新星イールドを完成させ、初期世代の超新星についてこれまでに得られていない示唆を与えることができたため。
今後は異なる反応率によるイールドの違いをシステマティックに調べて行く必要がある。重要な反応率を絞り込んでいく順序が重要になると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
AIP Conference Proceedings : The 11th International Symposium on Origin of Matter and Evolution of the Galaxies
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