金属イオン抗原提示に関わるMHCクラスII結合ペプチドを同定するに当たって、まずT細胞活陛化能を指標としたin vitroアッセイ系の確立を試みた。しかし、in vitroでは金属イオンによる細胞毒性が強く出てしまい、アッセイ系の確立が困難であった。そこで、既に確立されていたin vivoアッセイ系を利用することにした。このin vivoアッセイ系では、通常ではアレルギー反応を誘導しない低濃度のNiCl_2溶液に被験サンプル(ペプチド)を混合してマウス耳介に皮下注射し、24時間毎に耳の厚みを測定する。被験サンプルに金属アレルギー促進活性がある場合のみ、耳の腫脹が観察される。しかし、NiCl_2+LPS感作マウス脾臓抗原提示細胞由来のMHCクラスII結合ペプチドは、in vivoアッセイ系で金属アレルギー促進活性を示さなかった。ペプチドはin vivoでは半減期が短いことが予想され、in vivoアッセイ系はその活性の評価にふさわしくないことが考えられるため、今後の研究ではin vitroアッセイ系を再検討する必要がある。 他方、LPS単独投与後のマウス血清(LPS-血清)はin vivoアッセイ系で金属アレルギー促進活性を示すことが前年度までの研究で明らかになっていた。LPS-血清を限外ろ過法で分画したところ、50-30kDaの画分に活性が保持されていることが分かった。さらに、イオン交換クロマトグラフィーにて分画を試みたところ、pH7.5の場合、陰イオン交換体に結合せず、陽イオン交換体と弱く結合する画分に活性が保持されていた。すなわち、LPSにより誘導されるパートナータンパク質は、分子量50-30kDa、pH7.5のとき陰性荷電であることが示唆された。
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