金属イオンはアレルギー性接触皮膚炎のアレルゲンであり、中でもニッケルは最も頻度の高いアレルゲンとして知られている。金属イオンはキャリアーとなる自己タンパク質と結合してT細胞に抗原提示されると考えられているが、このキャリアータンパク質は未だ同定されていない。当研究室では、NiCl_2にLPsを併用(NiCl_2+LPS感作)することでマウスにNiアレルギーを起こすことに成功した。このことは、LPSがNiイオンのキャリアータンパク質を誘導する可能性を示唆する。そして、これまでの研究で、LPS投与後のマウス血清(LPS-血清)はin vivoアッセイで金属アレルギー促進活性を示すことが分かった。このin vivoアッセイでは、通常ではアレルギー反応を誘導しない低濃度(5μM以下)のNiCl_2溶液に被験サンプル(LPs-血清もしくはその精製画分)を混合してNi感作マウス耳介に皮下注射し、耳介の厚みを測定する。そして、耳介の腫脹が観察された場合、被験サンプルに金属アレルギー促進活性があると判定する。本年度は、LPS-血清中の金属アレルギー促進活性をもつ分子(キャリアータンパク質であることが予想される)の精製に取り組んだ。まず、LPS-血清をNiイオン結合カラムでアフィニティー精製したところ、Niイオンと結合する画分に金属アレルギー促進活性が検出された。この画分をゲルろ過クロマトグラフィーにより分画したところ、10kDa前後の画分(SDS-PAGEで確認)に金属アレルギー促進活性が検出された。今後はこの画分のさらなる精製を行い、金属アレルギー促進活性有する分子を同定したいと考えている。
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