体幹部の背腹を決定するメカニズムについては、これまでに初期胚でBMPなどの分子がつくる非対称な濃度勾配によって背腹軸が形成されることが明らかになってきた。しかし、この発生初期の軸性が発生後期における実際の形態としての背腹パターンとどのように繋がっているのかについては、ほとんど理解されていない。 本研究では、ユニークな背腹異常の表現型を示すメダカ突然変異体Daを用いて、脊椎動物の発生過程後期における背腹パターン形成メカニズムを明らかにすることを目的としている。 私はこれまでに、新たに確立した組織移植実験系を用いて、Da変異体の原因遺伝子zic1およびzic4の体節における発現が、体幹部の外部形態の背側化を支配していることを示した。zic1およびzic4は体節形成後まもなく体節において発現する遺伝子である。 今回、メダカにおける初代培養実験の結果から、体節におけるzic1およびzic4の区画的な発現が周囲の組織によって誘導されていること、そしてその発現は発生後期以降細胞自律的に制御されるようになることがわかった。すなわち、メダカの体幹にみられる背腹方向の区画的な構造は、発生後期においてzic1およびzic4を介して、BMPなどの濃度勾配情報からアナログ-デジタル変換されていると解釈できる。また、さまざまな魚類について遺伝子発現解析を行った結果から、本機構は少なくとも魚類において広く保存されていることがわかった。 以上の結果の一部は、研究論文としてDevelopment誌に受理された。
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