研究課題
本年度は、ゼーマン効果を用いたポジトロニウム超微細構造の精密測定を行った。(1)ppmの高い精度でポジトロニウム(Ps)の超微細構造(HFS}を測定するには、磁場の一様性を0(ppm)まで高めることが必要不可欠である。10cmの広い領域において、大型超伝導磁石を用いて10ppmまで一様性を高め、さらに補償コイルを製作し0.9ppm(RMS)の非常に一様性の高い磁場を得ることに成功した。(2)S/Nを20倍向上させ、Psの熱化による不定性(過去の実験で4~20ppmを小さくするため、純イソブタンによる測定を世界で初めて行う。ガスによるHFSへの影響を評価するには、低圧での測定が極めて重要である。そこで、RFフィードスルーを新しく製作し、放電が起こりにくいよう念入りに調整を行い、500Wでは0.25気圧まで、300Wでは0.18気圧まで耐えられるようになった。これらは過去の実験より低い圧力であり、ガスによる不定性を抑えることができる。(3)本測定は、平成22年7月より、KEKの低温棟にて開始した。東日本大震災で測定を中止するまで、ガス圧4点(1.0気圧、0.75気圧、0.25気圧、0.18気圧)での測定を完了し、0.25気圧までの3点で解析を完了した。それぞれのガス圧で10ppm程度の精度でHFSが得られた。真空に外挿した暫定値として、HFS=203.3983±0.0022(統計誤差,11ppm)±0.0032(系統誤差,15ppm)GHzを得た。これは、実験値+2.5σ、理論値+1.7σの値となる。昨年のプロトタイプ測定の精度(41ppm)を上回った。まだずれに対しては何も言えない。熱化の測定も行い、イソブタンで不定性を3ppm以下に抑えられることが分かった。(4)セーフティを構築し、リモート・コントロール・システムの構築を完了した。
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