現代天文学において、天体までの距離を求めることは重要な問題である。Ia型超新星は、その光度変化における減光率と絶対等級に相関関係があることが知られており、光度変化から距離を推定することが可能である。1990年代後半には、宇宙論的な距離で起こった多くのIa型超新星が調査され、宇宙膨張は加速に転じているという天文学史上重要な発見がなされた。このような背景を持つにも関わらず、その爆発する元の天体(親星)と爆発メカニズムはまだ決着がついていない。私は、これらの問題への制限にアプローチするために、Ia型超新星の爆発直後からの観測を実施している。超新星爆発は自由膨張しているため、外層から透けていき時間が経つとともに内側の層を観測されるようになる。したがって、超新星の爆発構造を知るためには{超新星の光度とスペクトルの時間進化を追うことが最適な手法になる。私は広島大学宇宙科学センター付属かなた望遠鏡や国立天文台すばる望遠鏡を用いてこのような観測を行っている。今年は特に、極めて明るいIa型超新星SN 2009dcの後期観測をすばる望遠用を用いて行い、早期観測と合わせて博士論文としてまとめた。すばる望遠鏡で得られた観測結果では、初期の光度から予測されるより有意に暗いことを見出した。また、Ia型超新星親星候補であるさそり座U星のアウトバースト直後の連続分光観測にも成功し、その爆発構造を明らかにした。この結果はすでに私を主著とした査読論文として公表されている。
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