研究概要 |
HESS J1741-302はTeVガンマ線未同定天体としては最も暗く、銀河中心領域に満ちる拡散TeVガンマ線の起源とも考えられている。近傍に電波パルサーPSR B1730-30を伴うため、これまで報告されてきた多くのTeVガンマ線未同定天体と同様に、パルサー風星雲の可能性も示唆されてきたが、その正体は不明である。 我々は「すざく」銀河中心領域大規模観測(GC Key project)データを用い、TeVガンマ線未同定天体HESS J1741-302の周辺領域でのX線放射を探査した。 その結果、PSB B1730-30の周辺からコンパクトなX線天体Suzaku J174035.6-301416を発見した。近赤外星観測も用いた正確な位置測定の結果、Suzaku J174035.6-301416がPSR B1730-30とは異なる天体であること、更にX線分光・時間変動解析により、強磁場激変星であることを突き止めた。強磁場激変星は銀河中心領域を満たす熱的拡散X線を構成する候補天体であるが、銀河中心方向でのサンプルは少なく、今回の発見は貴重である。 また、HESS J1741-302,PSR B1730-30領域からのX線放射に厳しい上限値をつけた。この結果はHESS J1741-302が多波長での対応天体がないdark particle acceleratorであることを裏付けた。 以上の結果を査読付き論文誌Publication of the Astronomical Society of Japan(PASJ)に投稿し、受理された。2011年9月発行予定のPASJ Suzaku special issueに掲載される予定である。
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