二次元HPLCを用いて神経興奮性アミノ酸(L-グルタミン酸、グリシン、D-セリン、D-アラニン)の高感度選択的一斉分析法を開発するため、分離条件の精査を行った。一次元目の逆相分離においては移動相中アセトニトリル濃度を検討し、0.05%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル水溶液のグラジエント溶離を用いることによりセリン、グリシン、グルタミン酸及びアラニンが約60分で良好に分離した。また、二次元目の光学分割においてはSumichiral OA-2500Sを固定相とし、セリンは5mMクエン酸を含むメタノール/アセトニトリル(25/75)、アラニンは4mMクエン酸を含むメタノールアセトニトリル(50/50)、グルタミン酸は2.5mMクエン酸を含むメタノールアセトニトリル(25/75)で良好な光学分割が得られた。セリン、アラニン、グルタミン酸の分離度は各々2.33、2.70、2.08であり、いずれも良好な光学分割が達成された。以上の条件を用い、複数のアミノ酸画分をトラップ可能とするマルチループバルブを導入した二次元HPLC一斉分析法を開発した。本分析法の検出限界はインジェクト量当たり500amolであり、内在性微量D-セリン及びD-アラニンの高感度検出が達成された。神経興奮性アミノ酸を切り口とした精神・神経疾患の新規治療薬や診断マーカーの開発において血液及び尿に加えて脳脊髄液は主要なターゲットである。そこで、本法を用いてマウス血液、尿及び脳脊髄液の分析を検討した結果、神経興奮性アミノ酸が良好に定量可能であり、今後本法を用いて神経変性疾患の治療標的や診断マーカー探索への展開が期待される。
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