研究課題/領域番号 |
10J07562
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三次 百合香 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 神経興奮性アミノ酸 / 光学分割 / 神経変性疾患 |
研究概要 |
内在性神経活性アミノ酸(L-グルタミン酸、グリシン、D-セリン及びD-アラニン)の高感度選択的二次元HPLC法開発において、実試料に存在する多種多様なペプチド等の妨害成分と神経活性アミノ酸を分離するためには、微量成分であるD体がL体より先に溶出する複数の光学分割カラムを用いる定量値確認が不可欠である。そこで9種のパークル型キラル固定相(SumicLiral OA-2000S、-2500S、-3100S、-3200S、-3300S、-4100SR、-4500SR、-4700SR、-4900SR)におけるグルタミン酸、セリン及びアラニンの光学分割を検討した。その結果OA-2500S、-3100S、-3200S及び-4700SRを用いることにより、全てのアミノ酸においてD体が先に溶出し良好な光学分割が達成された。特にOA-3200Sにおいてはいずれも分離係数1.25以上であった。そこでOA-3200Sをキラル固定相とし、マウス血液及び脳組織を用いて妨害成分と分離可能な移動相条件を精査した結果、セリンは0.2%ギ酸を含むメタノール/アセトニトリル(80/20)混合液、アラニンは0.5%ギ酸を含むアセトニ-トリル溶液、グルタミン酸及びグリシンは1%ギ酸を含むアセトニトリル溶液を用いることにより、実試料における妨害成分と神経活性アミノ酸との良好な分離が達成された。そこで、モノリス型逆相ミクロカラムとOA-3200Sを接続して二次元HPLCを構築し、神経変性疾患の一つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウス中含量を解析した。その結果、コントロールマウスと比較してALSモデルマウスにおいて病変部位中D-Ser含量が増加していることを明らかにし、ALSにおいてD-Serが新規診断マーカー、治療標的となり得ることが示唆された。また、従来のアミノ酸分析ではセリン含量に有意差が認められなかったことから、光学異性体が個別定量できる本分析法を用いることによりD体をターゲットとした新規診断マーカーや治療標的の探索が可能となることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画であった「種々のパークル型キラル固定相を用いる神経興奮性アミノ酸の光学分割・分離条件の検討」及び「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における神経興奮性アミノ酸の病態関連解析」を達成しているので、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
筋萎縮性側索硬化症については、慶應義塾大学医学部との共同研究によりモデルマウスを用いて種々の脳組織や尿、血液、脳脊髄液における神経活性アミノ酸含量を解析し、創薬や病態解析において不可欠な基盤データを取得すると共に神経活性アミノ酸含量変化と症状等との相関を検討する。併せて、ヒト臨床検体として尿、血液、脳脊髄液における神経活性アミノ酸含量を解析し、診断マーカー及び治療標的としての有用性を評価する。 その他の神経変性疾患として、アルツハイマー病やパーキンソン病、重度の精神症状や発達障害が認められるレセリン合成酵素欠損症等のモデルマウスにおける神経活性アミノ酸含量を解析し、新規診断マーカー及び治療標的の探索を行う。
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