研究課題/領域番号 |
10J07643
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 俊一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 惑星 / 月 / 衝突盆地 / 熱進化 / 粘弾性 / 放射性元素濃度 |
研究概要 |
まず、5月に幕張メッセで行われた地球惑星科学連合大会において、口頭発表を行った。本発表は、月裏側高地にある盆地の地形・重力場から推定された、熱構造に関する研究である。本研究は、採用第一年度から引き続いているが、パラメータを増やし膨大な計算を行った。計算を効率的に進めるため、国立天文台水沢観測所の協力を仰ぎ、計算機を利用させていただいた。その結果、月裏側の放射性元素濃度について、より強い制約を得ることができた。 さらに、月裏側全体の盆地に対して同様の解析を進めた。9月には、同研究の成果を国際会議で発表した。同会議は水星探査に関するものであり、基本的には水星探査機MESSENGERに搭載された観測機器の各責任者が発表をした。そのため、私以外はベテラン研究者であった。このことは、本研究が「測地探査から得られる惑星内部構造とその進化に関する知見」として大変重要であると評価されたということを示している、 その後、さらに解析を押し進め、月全球の盆地に関する熱構造の制約、放射性元素濃度の制約を行った。その結果、約40億年前の月の温度構造は、(地球から見ることのできる)表側と(地球から見ることのできない)裏側で大きくことなっていた可能性が示唆された。また、この結果は、表側と裏側で放射性元素濃度が大きくことなっていることを反映しているのかもしれない。いずれにせよ、月の初期進化は非常に不均一であったことが明確になってきた。本研究に関する成果は、日本惑星科学会にて、口頭とポスターの両方で発表された。 加えて、採用第一年度の成果に加えて、月の初期変形に関する議論を加えたものを、アメリカ地球物理学会誌"Journal of Geophysical Research"に投稿、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱進化と粘弾性変形を組み合わせた計算コードの開発が完了した。この手法に関する論文が出版され、新規コードの重要性も広く認められた。また、得られた計算結果と最新の観測データの比較を行い、月全球に渡る進化理解につながる、大変重要な結果も得た。以上より、研究は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは比較的大局的な月の変形について考えてきた。その結果、地域によって進化が大きく異なることが示唆された。そこで今後は、地域を限定し、より詳細な議論を個別に行う方針である。 また、研究成果を広く発信するために、国際・国内学会により多く参加する方針である。
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