研究課題/領域番号 |
10J07650
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山下 絵美 (川野 絵美) 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ロドプシン / 松果体 / 光受容 / 波長識別 / パラピノプシン |
研究概要 |
松果体には、UV光と可視光の比率を検出する「波長(色)検出応答」が存在する。これまでに、下等脊椎動物の松果体で機能するUV光受容タンパク質としてパラピノプシンを同定し、パラピノプシン発現光受容細胞が、可視光受容細胞と共に、色検出応答を生み出すこと示唆した。 今年度は、パラピノプシンを発現している光受容細胞がキャッチした色情報が、どのように中枢へ伝達されるのかを明らかにすることを目指し、UV光受容型パラピノプシンが関わる神経ネットワークについて解析した。具体的には、既に同定しているUV光受容型パラピノプシンのプロモーター活性を有する上流配列を利用して、UV光受容型パラピノプシン発現細胞に、経シナプス性の神経トレーサー物質であるWGA(小麦胚芽レクチン)を特異的に発現させたトランスジェニック(Tg)ゼブラフィツシュを作製した。次に、作製したTgゼブラフィツシュを用いて、UV光受容型パラピノプシン発現細胞が、どの中枢領域に光情報を伝達するのかを、組織学的に解析した。その結果、WGAで標識された神経線維の終末が、間脳の手綱核の限定された領域(背側手綱核外側亜核)に投射することが観察された。すなわち、松果体の色検出応答は、パラピノプシン発現細胞から神経節細胞を介して、手綱核に神経投射することを見いだした。この領域は恐怖にさらされた際の行動(すくみ、逃避など)の選択に関わることが報告されており、今回の研究結果により、松果体の色検出が恐怖行動の制御に関わる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tgゼブラフィッシュの作製に成功したこと、UV光受容細胞の神経投射が明確に観察できたことで、これまで不明であった松果体色検出応答の生理機能を解明する手がかりとなる重要な組織学的知見が得られた。このことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で、UV光受容型パラピノプシン発現細胞を出発点とした神経ネットワークが明らかとなったので、次に、色検出応答の関わる生理機能を明らかにするために、パラピノプシン発現細胞の機能阻害個体を作製し、行動実験による解析を計画している。さらに、松果体神経性光応答の全容を理解するために、明暗検出に関わると考えられるエクソロドプシン発現細胞にWGAを発現するTgゼブラフィッシュの作製を行う。
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