下等脊椎動物の松果体には、紫外光と可視光の比率を検出する「色検出応答」が存在し、これまでに、パラピノプシンが松果体の紫外光受容の分子基盤であることを同定してきた。昨年度までの研究から、硬骨魚類ゼブラフィッシュにおいて、松果体と副松果体の両方に、パラピノプシンを発現していることを確認した。さらに、松果体のパラピノプシン発現細胞は神経節細胞を介して、副松果体のパラピノプシン発現細胞は(神経節細胞を介さず)直接的に、共に間脳の手綱核と呼ばれる領域に神経投射する可能性を見いだした。本年度は、松果体の色情報が手綱核に伝達されるのかについて、神経トレーサー法による検証実験を続けて行った。具体的には、パラピノプシン発現細胞に蛍光物質であるGFP(細胞全体を標識)を発現する遺伝子導入ゼブラフィッシュを用いて、手綱核にニューロビオチンやデキストランなどの神経トレーサー物質を取り込ませ、手綱核を中心とした神経回路について調べた。その結果、松果体に存在するGFP標識されたパラピノプシン発現細胞の神経終末と、手綱核からの神経トレーサー物質の注入により逆行性標識された神経節細胞の一部が接する様子が、共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析により観察された。すなわち、パラピノプシンを含む紫外光受容細胞を出発点とする松果体由来の色情報は、神経節細胞を介して、手綱核へ伝達されるという、昨年度までの研究結果を裏付けるさらなる組織学的知見が得られた。
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