研究課題
アドレノメデュリン(AM)は多くの組織に分布し、血管拡張作用や血圧調節作用以外にも、抗炎症作用、臓器保護作用、抗酸化作用など、多彩な生理活性を有するペプチドである。AMノックアウトマウス(AM-/-)は血管の構造に異常により、胎生致死となる。さらにAMの受容体活性調節タンパクであるRAMP2ノックアウトマウス(RAMP2-/-)はAM-/-同様、血管の発達不全、構造異常により胎生致死となり、RAMP2により、AMの血管新生作用が規定されていることが報告されている。本研究では、血管におけるRAMP2の病態生理学的意義を明らかとするために血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(E-RAMP2-/-)を樹立した。E-RAMP2-/-は、全身性のRAMP2-/-と比較して、発生段階は進むものの周産期に全身性の著明な浮腫が認められ、ほとんどの個体において、周産期の死亡が確認された。一部残った個体では成体が得られ、血管の構造異常が認められた。長期飼育した成体のE-RAMP2-/-では、肺、腎臓、肝臓といった主要な臓器に血管炎様の細胞浸潤が自然発症した。その他の臓器として、肝臓では肝硬変様の形態変化が起こり、腎臓では、水腎症と多発性嚢胞腎の自然発症が確認された。そして、これらの臓器では、強力な酸化ストレスの亢進が認められた。E-RAMP2-/-では、血管内皮細胞のRAMP2欠損により、血管の恒常性破綻を生じ、その結果、全身の慢性炎症と臓器障害に繋がることが示唆された。これらのことから、AM-RAMP2システムが新規の治療標的として期待される。
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BIOMEDICAL CERONTOLOGY
巻: Volume34, NO.3 ページ: 27-30
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