本年度は、有機増幅回路へのフローティングゲート構造の応用について研究を行った。 有機トランジスタの問題点として、デバイスのばらつきがあげられる。デバイスのばらつきが大きいと、集積回路を作製した際に不安定性や特性のばらつきが生じてしまう。そこで、フローティングゲート構造を回路に取り組むことにより、デバイスのばらつきの低減を試みた。今回作製した有機増幅回路は、p型有機半導体のみで構成される有機Pseudo-CMOS構造である。有機Pseudo-CMOSインバータは、4つのガタ有機トランジスタを用いて構成されており、CMOSインバータと同等の特性を得られることが知られている。この構造にフローティングゲート構造を用いた。作製したインバータは、フローティングゲートに電荷を蓄える前は400mVのスイッチング電圧のばらつきがあったものの、電荷を蓄えた後は、20mVまで低減することに成功した。 さらに、作製した増幅回路の特性を評価したところ、最大で増幅率が100と非常に特性の高いものを作製することができた。これらの結果は、IEEE Transactions on Electron Devicesに本年度論文を発表するなど非常に高い評価を得た。 さらに、有機トランジスタ単体の特性改善にも着手した。p型有機半導体には耐熱性の高いDPh-DNTTを、n型有機半導体としては5FPE-NTCDIを用いることで、低電圧駆動する非常に特性の高い有機トランジスタの作製に成功した。これらの結果は、 Advanced Materialsに論文を投稿を行い、採択された。また、n型のトランジスタに関しては応用物理学会で発表を行い、 Poster awardに選ばれるなど、国内外より高い評価を得た。
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