研究概要 |
当該年度は昨年度から引き続き実施していた研究1,2の成果を国内外の学会で発表するとともに,学術雑誌への投稿に向けて執筆を行った。新たに研究3,4も実施し,その一部を国内外の学会で発表した(研究4は今年度も継続予定)。これらを通し,"親切のお返しには親切にする"という互恵性規範を喚起させることの効果と調整要因をあらゆる場面で検証できた。特に,互恵性規範の喚起によって迷惑行為者の不快感を喚起せず効率的に迷惑行為を抑止するという実践的な知見を提供できた。この知見から,迷惑行為・犯罪行為の長期的な抑止効果も期待できる。 <研究1:実際の行動場面における感謝メッセージの迷惑抑止効果の検討> 「ゴミの分別にご協力いただきありがとうございます」という感謝メッセージを介した互恵性規範の効果をフィールドで検討した。その結果,感謝メッセージの迷惑抑止効果は弱く,周囲の他者が迷惑行為(ゴミの不分別)を行っているか否かという要因に左右されやすい傾向が得られた。 <研究2:対人場面における互恵性規範の喚起による迷惑抑止効果の検討> 対人場面で互恵性規範を喚起させることの迷惑抑止効果を検討した。その結果,親切にされるとともに迷惑だとほのめかされると,親切に報いるために迷惑行為を抑制するよう動機づけられることが部分的に示された。 <研究3:感謝メッセージと送り手の情報呈示による迷惑抑止効果の検討> 研究1の結果を受け,感謝メッセージの効果を調整する他の要因(メッセージの送り手の情報呈示)を検討した。その結果,感謝メッセージは,送り手の情報が呈示された場合に互恵性規範というポジティブな意図を喚起することで迷惑行為を抑制するよう動機づけることが示された。 <研究4:対人場面における互恵性規範の喚起による迷惑抑止効果の再検討> 研究2の方法論的問題を解決した上で同様の仮説を検証し,互恵性規範の喚起による迷惑抑止傾向を得ている。
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