平成24年度では、「魚類下垂体ホルモンのソマトラクチン(SL)の分泌と合成に及ぼす視床下部ホルモンの影響」という研究課題のもと、平成23年度に作製したキンギョSL-αとSL-βを特異的に認識する抗血清を用いて、キンギョ下垂体初代培養細胞より分泌されるSL-αおよびSL-βの測定方法を検討し、SL-αおよびSL-βの分泌に及ぼす下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)の影響を調べた。キンギョ下垂体初代培養細胞より培養液中に分泌された各ホルモンを、ウエスタンブロット法により検出する方法を確立し、PACAPの添加により、SL-αとSL-β両方の分泌が促されることを見出した。さらに、PACAPによる各SL分泌促進作用は、PACAP特異的受容体であるPAC_1受容体を介して発揮されることを、受容体アンタゴニストを用いて明らかにした。 平成23年度の研究により、キンギョ下垂体におけるSL-αおよびSL-βmRNA発現量は、背地色に応答して変動することを示した。そこで、平成24年度では、キンギョ下垂体に存在するSL-α産生細胞、SL-β産生細胞およびSL-αとSL-β両方を産生する細胞の特徴付けを行った。一ヶ月間、白背地または黒背地で飼育したキンギョの下垂体におけるSL産生細胞の形態を免疫組織学的に観察し、比較した。 その結果、SL-α産生細胞は黒背地において肥大し、一方で、SL-β産生細胞は白背地において肥大していた。すなわち、SL-α産生細胞とSL-β産生細胞は背地色に応答し、相反して活性化することが示唆された。一方、SL-αとSL-β両方を産生する細胞の形態に背地色の影響は認められなかった。キンギョの初期発生段階における免疫組織学的観察の結果、SL-αとSL-β両方を産生する細胞は最初に発生するSL産生細胞であることが明らかとなった。SL-αとSL-β両方を産生する細胞の発生以降にSL-α産生細胞やSL-β産生細胞が出現することから、SL-αとSL-β両方を産生する細胞は、SL-α産生細胞やSL-β産生細胞へと分化する未分化な細胞であることが示唆された。
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