研究概要 |
有機電解合成法では反応は電子そのものを試薬とするため,酸化剤や還元剤の添加を必要とせず,反応は非常に穏やかな条件で進行する.本反応系は効率的に炭素-炭素結合を形成する手法として注目を集めており,特にオレフィンカップリングは多様な環化反応を達成するための強力な手法となる.これらの観点から,有機電解合成法はpHや温度に感受性な生体物質への応用が期待される手法となる.本研究では有機電解合成法を用いて穏やかな条件下でペプチド関連物質に架橋構造を導入し,その立体構造を制御することを目的とする.特に[2+2]付加環化反応系をこの目的における研究対象とし,当該年度の研究においては,本反応系の適用可能な範囲とその限界を,合成化学的に,そして計算化学的に探ることに焦点を当てた.また,この段階の研究ではそれぞれの事象を個別に観察していき,より本反応系に関するより多くの情報を得ることを目標とした.本研究成果については論文投稿および学会発表を迅速に行い,当該研究成果の有用性が広く認識されるよう、最大限努めた.その結果,本反応系における化学反応の機構に関して様々な重要な知見が得られ,これらの知見を基にして新規反応の組み合わせが多数発見された.合成化学的にも計算化学的にも非常に有用な結果が示され,これらの研究結果に関して,下記に示す通り5件の学術論文が掲載され,国際学会8件を含む全16件の学会発表を実施することが出来た.
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