本研究では、X線結晶解析、NMRに匹敵する精度と信頼性をもった高精度ホモロジーモデリングの開発を目指す。具体的にはX線結晶構造解析と同程度(RMSD2Å以内)の精度でのシミュレーションによる立体構造予測を可能にする、という事を目的として行う。これを実現することにより構造ゲノムプロジェクトで明らかになった構造を有効に利用し、蛋白質構造全体の網羅的理解を可能にする。また、蛋白質単体だけでなく他の蛋白質や分子との相互作用シミュレーションの研究の足がかりとなるツールを完成させる事を目指す。そこで我々は構造予測手法の性能を世界的なレベルで客観的に評価するため第9回蛋白質立体構造予測コンテストCASP9に参加した。約50個の蛋白質構造を予測し、我々は「鋳型を用いた構造予測」の部門で174チーム中3位の成績を収めた。CASP9に参加することによって、相対的な尺度で見れば我々の構造予測手法は世界の中である程度上位に位置するレベルであることがわかった。 精度の良いホモロジーモデリングを行うためには精度の良い構造-配列アラインメントを行うとこが重要である。そのためには単にペアワイズアラインメントを用いる方法よりも、鋳型や構造を予測したい配列のホモログを用いてマルチプルアラインメントを作成しその情報を用いた方が良いことが報告されている。そこで我々は精度の良いMSAをより短い時間で作成する手法を作成した。その際エネルギーランドスケープが滑らかになるようにエネルギーを書き換え、グローバルミニマムを探しやすくするような工夫を行った。それにより従来行われていた汎用性の高い強力なサンプリング手法(ここではconformational space annealing)でのMSAに作成に比べて遥かに短い計算時間で同程度に高精度なMSAを作成できるようになった。
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