研究概要 |
密度の異なる樹林帯モデルを組み合わせたときの津波減災効果について明らかにするために,本年度は水理模型実験と実験結果を高精度に表現する数値解析モデルの開発を行った.実験は海岸樹林を木製の円柱でモデル化し,植生密度と反射や植生内部通過エネルギーの関係を調べた.植生密度を一様にした場合,植生密度の異なる2つの植生帯を組み合わせた場合のどちらにおいても,植生帯の厚み(dn,汀線方向に単位幅を持ち,樹林帯の長さを他の一辺とする長方形内の樹木本数と胸高直径の積)が同じでも,より密に配置した場合に植生帯背後での低減効果が大きくなることを明らかにした.数値解析ではBoussinesq型方程式を基礎式に,植生による抵抗を加えたモデルを作成し,密度の異なる樹木モデルを背後の組み合わせたときの,植生帯背後の水位や流速の津波減災効果について解析を行った.異なる密度を持つ植生帯を組み合わせた場合は,後方部が密なほうが低減効果が大きくなること,また,植生背後における低減効果は植生帯をより密(植生帯全体の幅を小さくするほど)にするほど低減効果が大きくなることを明らかにした.植生帯による反射は主として密なほうの樹林帯の影響が大きく,また,前方部が密な場合は後方部の植生帯による反射の影響が小さくなってしまうためだと考えられる.今後は,マングローブなどの鉛直方向に構造の異なる樹木を対象とした実験を行い,数値計算における樹木モデルの高精度化を行う.
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