研究概要 |
グアニンが豊富なDNA配列は、一価のカチオン(Na^+,K^+など)存在下でグアニン四重鎖(G4)と呼ばれる特殊な高次構造を形成する。G4は、グアニン四つからなる平面構造を形成し、さらにそれらがπ-π相互作用により積み重なることで安定化されている。代表的なG4形成配列にはヒトのテロメアに含まれるTTAGGGの繰り返し配列がある。テロメア配列におけるG4の形成はテロメア伸長酵素であるテロメラーゼの阻害、およびテロメア維持機構を担うテロメア結合タンパクの解離により、癌細胞をアポトーシスへと導くことが知られている。G4の生体内における形成の有無およびG4の生物学的機能を調査するためのツールとして、in vitroにおいてG4に強力かつ選択的に結合するG4リガンドが求められている。 我々は昨年度までにG4認識部位を二点持つG4リガンドとして大環状ヘキサオキサゾール二量体を報告している。今年度は、G4安定化能の更なる向上を目的として、リンカー部位をアルキル鎖からエチレングリコール鎖へ、二量体同士の結合部位をアミドからリン酸受容体である二級アミンとした新規6OTD二量体を合成し、そのG4結合能を評価することとした。合成した各種化合物とテロメアDNAとの相互作用をCD、ESI-MASS、FRET融解実験によりそれぞれ解析を行った。その結果、いずれの二量体化合物もテロメアG4と1:1の結合比で相互作用することがわかった。また、これらのG4に対する安定化能は、これまでのアルキルリンカーを用いた場合よりも向上し、対応する単量体よりも強力にG4を安定化することを見いだした。今後は6OTD二量体の誘導体を用い「G4形成配列との不可逆な複合体(不可逆型G4)の形成」を検討する。これによりゲルビーズ上でのG4構造の安定化を計る。
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