研究課題/領域番号 |
10J08001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 新之介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 自己集合 / 分子認識 / 特異反応 |
研究概要 |
天然では、自己集合によって形成されたタンパク質の疎水ポケットを利用して、水中で高効率かつ高選択的な有機反応(酵素反応)を行っている。一方、人工系では多くのホスト化合物が合成されているものの、その孤立空間を利用し、新奇反応を創出した例はほとんどない。一方、今回用いる自己集合性かご型錯体は、これまでにも多くの新奇反応を生み出してきており、更なる新奇反応が期待できる。そこで本研究では、かご型錯体の疎水ポケットを用いた新奇反応の創出を目指す。 前年度の研究で、基質の包接状態(反応点の接近・固定)が特異反応を生み出すことための鍵であることを明らかにしていた。それを利用し、活性化エントロピー及び生成物のエナンチオ過剰率の制御という2つの研究成果を学術論文としてまとめた。 これらに加えて、新たな試みとして、「かご型錯体を用いた2核ルテニウムカルボニル錯体の反応制御」を行った。これまでのかご型錯体を利用した特異反応は有機反応が主であった。そのため、かご型錯体の利用を金属錯体の反応化学へと適応できれば幅広い展開が期待される。2核ルテニウムカルボニル錯体をかご型錯体1の内部空間に包接させたところ、2核錯体の構造がCis体に固定された。また、有機溶媒中で支配的に進行するルテニウム-ルテニウム結合の光解裂が完全に抑制され、2核構造が安定化されることを見出した。この成果を学術論文としてまとめた。 上記の知見を活かし、空孔によって保護された2核ルテニウムカルボニル錯体の新規光反応を探索した。その結果、アルキン存在下で紫外光を照射することで、カルポニル配位子の脱離を伴う光アルキン付加反応を達成した。また、得られた付加体は反応中間体であり、かご型錯体の空孔によって安定化され、捕捉されていた。有機溶媒を用いて抽出したところ、アルキン炭素-カルボニル炭素間で結合をもつ2核構造へと構造変換を起こした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
報告者は昨年度得られた基礎的結果をもとに更なる実験を進めたことで、次々と新たな現象を見出した。それらは既に論文としてまとめられ、採択、掲載された。特に、従来有機反応に限定されていた新奇反応を多核錯体の反応へと展開したことで今後は幅広い展開が期待できる。本年度のこの研究課題に対して得られた成果は、計画以上のものであり今後の親展にも大いに期待が持てる。
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今後の研究の推進方策 |
現在この研究課題に対して期待以上の親展が見られている。そのため、今後も特に大きな変更なく研究を進めていく予定である。特に、昨年度得られた成果のひとつである「多核錯体の新規反応」について焦点を当てた研究を進める。
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