研究課題/領域番号 |
10J08025
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片平 浩孝 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 寄生虫 / 生物標識 / ニホンウナギ |
研究概要 |
本研究の目的は、寄生虫を生物標識として有効活用することによって、野外におけるニホンウナギの分布・移動パタンおよび生態的地位を明らかにすることである。平成23年度は、1)愛媛県で実施してきた寄生虫調査を前年度同様継続することに加え、2)新たに2地域(島根県宍道湖周辺、静岡県浜名湖)で寄生虫相を調査した。 1)これまで実施してきた耳石の微量元素分析により、愛媛県愛南町の御荘湾とその流入河川に生息するニホンウナギは、4パタンの生活史型(河川生息型、河口域生息型、湾内生息型、河川-湾間移動型)を示すことが明らかとなっている。本年度はさらに、ニホンウナギの鰓に寄生するシュードダクチロギルス類(Pseudodactylogyrus anguillae、P.bini、P.kamegaii)に着目し、これら寄生虫3種の出現がウナギの生活史型ごとに異なることを明らかにした。特に、P.kamegaiiの生態はこれまで不明であったが、汽水・海域に分布し、高塩分濃度域に生息するウナギ個体を利用していることが初めて確認された。以上の成果は、長崎市で開催された平成23年度日本水産学会秋季大会にてポスター発表するとともに、英語論文としてまとめ、国際誌に投稿した。 2)島根県宍道湖周辺および静岡県浜名湖で水揚げされたニホンウナギを購入し、その寄生虫を調べた。島根県では、近接した複数の汽水域間で内部寄生虫相が異なることが明らかとなり、ウナギがそれぞれの生息場所に応じて異なる餌生物を利用し、場所ごとに特有の生態的地位を占めていることが示唆された。この成果は、東京都で開催された平成24年度日本水産学会春季大会にてポスター発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査の継続および調査地の追加に伴い、特に汽水域に生息するニホンウナギの宿主-寄生関係が次第に明らかになりつつある。しかし一方で、申請時に課した論文執筆活動に遅れが生じている。今後、得られた成果を迅速に公表していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
寄生虫の生物学的視点を最大限に活用することによって天然ウナギの分布・移動パタンおよび生態的地位を明らかにするという本研究の目的を達成すべく、これまで実施してきた「愛媛県とその他の地域におけるウナギの寄生虫相調査」および「ウナギの耳石分析」を完結させる。なお、次年度は最終年であるため、年度の多くを学術論文および博士論文の執筆に費やす計画である。
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