研究課題/領域番号 |
10J08063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹原 宏明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | マイクロ流体デバイス / 2光子顕微鏡 / 神経細胞 / 脳 / in vivo / 埋め込みデバイス / 光刺激 / ケイジド試薬 |
研究概要 |
これまで、マイクロ流体デバイスは、主に細胞や血液など生体外に取り出した試料(in vitro)のバイオ分析ツールとして大きく発展してきた。本研究では、マイクロ流体デバイスを生体内(in vivo)に埋め込むことを提案し、生体組織中での細胞研究のためのマイクロ流体デバイス技術の開発を行った。まずは、in vivo観察の要請を満たした開放系のデバイスの開発を通じ、埋め込み型マイクロ流体デバイスのin vivo細胞研究への応用の可否を検討し、知見の蓄積や課題の抽出を行った。その結果、デバイスの最先端の神経細胞研究への有用性が示され、医学研究への応用を進めるなど一定の成果を得た。その一方で、観察窓部分への気泡の混入や試薬導入による脳組織の振動など既存のマイクロ流体デバイス技術の応用では解決できない課題が存在することも明確になった。そこで、物質透過性と柔軟性、生体適合性を有するハイドロゲルをマイクロ流体デバイスに応用するための要素技術を開発し、デバイスの送液系と脳組織をハイドロゲルで分離することで、上述の課題を克服した半開放系デバイスの開発を試みた。ハイドロゲルをマイクロ流体デバイスに応用するために、Tetra-PEG ge1とPDMSを接合しマイクロ流路を形成する手法であるハイドロゲルリアクティブマイクロポンディング法(HRMB法)を開発した。そして、実際にデバイス内の送液系と脳組織をハイドロゲルで分離した半開放系デバイスを作製し、デバイスを埋設したマウス脳組織の神経細胞の観察及び脳組織への試薬投与を達成した。本技術は、これまで困難であった生きたマウス脳組織中の神経細胞を長期的に観察が可能な状態での複数試薬の直接投与を可能とし、脳機能の解明や脳疾患の治療法開発に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、in vivo 観察の要請を満たした埋め込み型インターフェイスデバイスが開発され、すでに本デバイスを用いた医学研究が進められているため。今後、本デバイスが埋設されたマウスを用いた実験を通じて、新たな医学的知見が得られると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
第一世代の埋め込み型インターフェイスデバイスを用いたin vivo案験から得られた課題(試薬溶液の送液速度の制御性・脳組織への庄力負荷・脳組織の振動)を克服する第二世代のデバイスの開発を進める。本研究課題でこれまでに開発したTetra-PEG ge1とPDMSを接合してハイブリッド型マイクロ流路を形成する技術を応用し、第二世代デバイスを開発する。最終年度にあたる平成24年度には、埋め込み型のマイクロ流体デバイス技術に関する知見を一般化・体系化しまとめる。
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