研究概要 |
本研究では、脊椎動物が環境変化に応じて嗅覚応答性の調節を行う機構について明らかにすることを目的としており、まずはGnRHペプチドが個体の嗅覚応答性を調節する機構に焦点を当てて検証を行った。また、その過程でドーパミンの嗅覚応答性調節機構に関しても、興味深い知見が得られたので更なる検証を行った。 まずは嗅球神経回路におけるGnRHペプチドの作用を明らかにするため、嗅球におけるGnRH受容体の発現解析を行った。この際、既知の2種類のキンギョGnRH受容体の配列に加え、更に2種類の新規GnRH受容体の配列を同定するのに成功した。さらに、これらいずれのGnRH受容体もキンギョ嗅球内において発現していることをRT-PCR法によって明らかにした。 次にGnRHの嗅球への作用を電気生理学的に検証したところ、(1)GnRHは嗅球内シナプス伝達を濃度依存的に促進すること、(2)その作用は嗅球内において広範囲に見られること、(3)その作用は前シナプス性のものであること、が明らかとなった。 さらに今回確立した実験系を用い、様々な脳領域においてGnRHの作用と密接な関連性を有することで知られるドーパミンの嗅球に対する作用も同様に検証した。その結果、ドーパミンはGnRHとは反対に(1)嗅球内シナプス伝達を抑制すること、(2)その作用は前シナプス性であることなど、が明らかとなった。 今回得られた知見は,個体の嗅覚応答性調節機構の全容を明らかにするにあたり、その一端を担うものと期待される。
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