研究概要 |
本研究では,高画質画像の蓄積・伝送のため,マルチバンド画像の可逆・非可逆統合型画像圧縮技術を確立することを目的としている.可逆を前提としながらも,符号量の調整に応じてRGB画像の画質・光のスペクトル歪みが比例して改善されるような,スケーラビリティを持つ符号化方式を提案する.本年度はマルチスペクトル画像のデータ量を本質的に削減するために,単板マルチスペクトルカメラを用いた画像符号化手法について検討した.多板フィルタを用いた撮影ではフィルタ枚数分の撮像データが作成されるが,画素ごとに異なるカラーフィルタを使った単板フィルタではフィルタ1枚分の撮像データが作成される.本手法では補間前のモザイク画像を空間・波長の両方の相関係数を利用する変換を用いることで圧縮し,従来の多板フィルタによる撮影データとの圧縮効率を比較した.結果,高ビットレートにおいて提案手法の方がより良好な画質を得ることができ,従来のマルチスペクトル画像の圧縮効率を大幅に改善できる可能性を示した.単板フィルタによる撮影は撮像時点で解像度をある程度犠牲にする必要があるが,それを許容できるシステムでは有効な手段であるといえるため,従来の40%~50%という可逆符号化効率を改善するための手段としても有効である.これは自然画像のみならず,病理画像,動画像において,特に実時間で適用したいシステムに有効であるため,マルチスペクトル画像のアプリケーション展開に欠かせない成果である.
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