研究課題/領域番号 |
10J08096
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 徹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員PD
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キーワード | 遊牧 / 中央アジア / ロシア帝国 / キルギス / クルグズ |
研究概要 |
【1】研究成果の発表:昨年度に引き続き、研究成果の発表に積極的に取り組んだ。昨年は口頭報告を3回実施した。2011年11月に開催された史学会大会においては、「混成村落の創設にみる20世紀初頭のクルグズ-ロシア関係」と題して報告を行なった。本報告において、定住化したクルグズとロシア人農業移民を同一の行政村落上に編成した混成村落の実態を明らかにし、中央アジアにおけるロシア統治の展開とその実相の一旦を明らかにした。2012年1月に開催されたイスラーム地域研究東京大学拠点公募研究「近現代中央アジア山岳高原部における宗教文化と政治に関する基礎研究」第2回研究会では「イスラームをめぐる北部クルグズ指導者層の動向」と題して研究報告を行なった。従来、クルグズの首長層マナプをロシア統治の仲介者としての側面から考察してきたが、本報告ではクルグズ社会のイスラーム化の仲介者としての側面から首長層マナプの動向を考察した。さらに3月には、インド・コルカタ市にあるマウラナ・アブル・カラム・アザド記念アジア研究所で開催された国際セミナー「ユーラシアの国家:ローカル・グローバルな場における行動」において「クルグズ遊牧民の近代史における山岳の役割」(英語)という題目で報告を行なった。この報告において、環境史という新たな視点からクルグズ人の社会史やアイデンティティをとらえ直す可能性について報告するとともに、インドの中央アジア研究者たちと交流を持つことができた。口頭報告の他に、国内の査読付き学術雑誌に投稿し、論文として掲載された。2011年6月に『スラヴ研究』58号に論文「クルグズ遊牧社会におけるロシア統治の展開:統治の仲介者マナプの位置づけを中心に」を発表した。2012年1月には日本中央アジア学会報』に論文「混成村落の創設にみる20世紀初頭のクルグズ-ロシア関係」を投稿して採用された(現在雑誌は印刷に向けて最終調整中である)。 【2】史料調査:2011年9月にカザフスタン共和国アルマトゥ市にある同国立中央公文書館において史料調査を実施した。当調査では、出版のための補足史料を収集するとともに、新たなテーマとして浮上しつつある、クルグズの首長層の近衛兵(イギット)の動向を探る上で貴重な資料を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料収集とその読解、ならびにそれに基づいた研究成果の発表のそれぞれをバランスよくコンスタントにこなすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで未調査のままとなっているロシア・モスクワの公文書館における史料調査を一定期間集中して行ないたい。これにもとづいて、これまでの研究成果の出版作業を本格的に進めたい。欧米圏の学術誌に論文を投稿し、研究を国際的に発信してゆきたい。
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