我々の周りに存在する電子機器にはメモリ素子として半導体メモリが使用されているが、特にフラッシュメモリは高集積化および大容量化が容易であるため非常に多く使用されている。浮遊ゲートをナノメートルサイズの金属ドット(金属ナノドット)としたナノドット型浮遊ゲートメモリが高信頼性および低電圧駆動の観点から注目を集めている。本研究では、フェリチンと呼ばれる生体内の鉄分を調整するタンパク質を利用して金属ナノドットを形成し、そのナノドットを電荷保持ノードとしたフローティングゲートメモリの作製を行っている。 フェリチンを利用してナノドット型浮遊ゲートメモリを作製する場合、フェリチンの吸着密度に限界が存在するため電荷保持部分となるナノドットの吸着密度にも限界が存在する。現在フェリチンを利用したナノドットの最大吸着密度は8.0×10^<11> cm_<-2>であり、この数値以上の吸着密度は達成不可能である。そこで本研究ではTitanium-Binding-Ferritin (TBF)という特殊なフェリチンを利用して、ナノドットを積層化させるBio-Layer-By-Layer (Bio-LBL)法を利用する事でナノドットの吸着密度を増加させる手法を提案した。このフェリチンはチタン、銀およびシリコンにのみ特異的に吸着するペプチドアプタマーを有する特殊なフェリチンであり、自発的に無機物を形成するバイオミネラリゼーションの能力も有している。今年度は浮遊ゲートメモリの作製に適したBio-LBL法の確立および同一種類の金属ナノドットを積層化させた浮遊ゲートメモリの作製を行った。その結果、ナノドット層を積層させることにより、電荷注入量の増大だけではなく、電荷保持特性の向上、書込および消去特性の向上およびメモリの信頼性向上を実現する事ができた。
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