量子計算は入力された状態に対してユニタリー変換を施すことで量子状態を変化させ、最終的に得られた状態から計算結果を割り出すという方法をとっている。つまり全ての量子計算(ユニバーサルな量子計算)を行うためには、全ての(ユニバーサルな)状態操作を実現する必要があるということになる。今回は測定により演算を制御するというクラスターモデルにおいてこの量子状態操作の実証実験を行った。 これまでの研究により、1モードの入力に対するガウシアン操作という操作を実現していたため、平成22年度は2モードの入力に対する制御Zゲートという演算の実証実験を行った。この演算は2モードの入力状態をエンタングルさせる働きを持つ。クラスターモデルの量子計算のリソースとしては連続量線形4モードクラスター状態を利用した。行う演算は2モードの入力状態及びクラスター状態の部分系(2モード)に対する測定の測定基底によって決定され、今回は演算が制御Zゲートとなるように選択をした。続けて適切なフィードフォーワードを行うことで、演算が完了する。入力状態としては、コヒーレント状態と真空状態を利用した。前者を利用することで入力状態が正しく伝送されていることを確認し、後者を利用することで出力がエンタングルしていることを確認した。これにより、クラスターモデルによる制御Zゲートの実装に成功したといえる。 一般に、任意の多モードガウシアン操作は1モードの入力に対するガウシアン操作及び1種類の2モードの入力に対するガウシアン操作を組み合わせることによって実現することができるということが分かっている。従って過去の研究と今回の実証実験を合わせることによってこの構成要素がそろったことになる。
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