研究計画中、平成22年度分の内容については要点が2つあった。その2つとは、第一に、国内の比較事例として、歌舞伎町以外の繁華街に関する調査を進めること、第二に、国外の比較事例として海外の繁華街について文書調査を行うこと、である。 第一の国内の比較事例については、渋谷道玄坂地域を中心としてプレサーベイを行った。その結果として明らかになったのは、道玄坂地域においては地域集団活動が歌舞伎町ほど活発ではなく、また不定形であるということであった。これは、一方で調査を継続していた歌舞伎町の地域集団活動が、内部に多様な亀裂や軋礫を抱え込みながらも、行政という公的組織と個別店舗という私的組織のあいだに立って、まさに本研究その分析を目的としていたところの媒介の機能を、きわめて都市的なかたちで発揮していたのとは対照的であった。 第二に国外の比較事例に関して行った文書調査から前提として明らかとなったのは、本研究に登場する主要なアクターのひとつである風俗営業店のような存在はかなり特殊日本的なものであり、国外ではあまり一般的ではないこと、またそれに伴って、既存の研究が個人単位に焦点を当てたセックスワーカー研究に偏っていたことであった。 以上のように、平成22年度に実施した研究のなかでは、比較都市社会学研究を目指して対照事例に関するプレサーベイを進めた結果として、漠然とした比較研究に短絡することは効果的ではないと予想され、むしろブレサーベイから抽出されたいくつかの変数や概念について、再び歌舞伎町において調査研究を行うことが有効であると結論づけるに至った。とりわけ、平成22年度以前にはほとんどアクセスできていなかった、個別店舗の従業員レベルの個人に関しても追加の調査を計画する必要が認められた。
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