研究課題/領域番号 |
10J08221
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武岡 暢 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 歓楽街 / 都市 / 風俗営業 / 法の執行 / 不可視性 |
研究概要 |
2011年度の研究計画において重要だったのは、都市における多様な集団間の緊張や対立といった関係のなかでのmediateの実践に着目する、という視座である。都市におけるさまざまな集団の存在を指摘し、生態を記述し、その存立と問題を分析してきたのは、従来の都市社会学の重要な蓄積であり方法でもあった。 そこで2011年度には、いくつかの集団のmediateによって存立している、極めて都市的な集団として風俗営業を取り上げ、その記述に集中して注力することを目指した。具体的には、客、従業員、オーナーなどのアクターと、無料案内所や客引きによって織りなされるネットワークを中心として、まず風俗営業のあり方そのものの記述を試みた。 2011年度末の実施状況としては、「記述」としてのアウトプットには至っていないが、風俗営業店舗におけるインタビューならびにフィールドワーク、そして無料案内所ならびに客引きに対するインタビューと、路上におけるフィールドワークをインテンシヴに実施することには成功している。この中で、風俗営業店の従業員がしばしば友人ネットワークを介して入職することや、店舗従業員は店舗外のスカウトや客引きといった「ストリート」のアクターと密なコミュニケーションを取りながら活動していること、またそのコミュニケーションに付随する金銭的利益の相互供与のメカニズムなどが明らかになった。これは、これまで全く未知であった風俗営業の営業メカニズムを、組織外とのネットワークまで含めて説明する重要な手掛かりとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載の「研究の目的」においても意識されていたように、本研究において重要なのは「中間集団」の多様性を、歓楽街という地域社会の具体性のなかで把握することにあった。しかし研究の進展とともにこの内実が当初の想定よりはるかに複雑であることが明らかになり、また調査地の特質上、法に抵触するアクターの調査は困難を極めている。そのため、分析以前に、研究対象の記述に手間取り、達成度としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の達成度に関する点検、評価からも明らかなように、中間諸集団の媒介実践と地域コミュニティ形成について考察するに当たっては、その場所の具体性に踏み込んだ調査と記述が決定的に重要である。そこで、本研究課題の今後の推進においても、一般的な変数の組み合わせによる分析や、理論による読解、翻訳などを急がず、まずは風俗営業なら風俗営業が他のどのようなアクターとどのような関係性にあるものとして理解可能なものであるのか、という点を重視するべきである。
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