研究概要 |
近年、過栄養の環境が生じやすい経済的先進国において、肥満は急激に増加している。肥満は糖尿病・高血圧・高脂血症等の生活習慣病の発症と進行に深く関与し、その対策は予防医学上重要な課題である。しかし、肥満症に有効な薬は限られており、新たな標的の探索、薬の開発は急務である。肥満は体内脂肪組織の重量が増加した状態であり、脂肪細胞の増殖や分化機構と密接に関連する。今年度の成果として、脂肪前駆細胞3T3-L1細胞・初代培養脂肪前駆細胞を用いた実験により、Tob,Tob2が脂肪細胞分化を抑制制御することを示した。一方、CNOT7の脂肪細胞分化への寄与は見られなかった。また、Tob,Tob2,CNOT7 KOマウスを用いて高脂肪食付加実験を行った結果、野生型マウスとTob,CNOT7 KOマウスの体重量、臓器重量には差が見られなかったが、Tob2 KOマウスにおいて脂肪組織重量の増加が見られた。この結果は、Tob2が脂肪細胞分化を抑制するというin vitroの実験結果とも一致しており、Tob,Tob2,CNOT7のなかでも、Tob2は特に脂肪組織形成、脂肪細胞分化に重要な役割を担っていることが示された。今後は、Tob2 KOマウスの脂肪組織を用いてマイクロアレイを行ない、Tob2の発現が影響を与える脂肪細胞分化関連遺伝子をスクリーニングし、Tob2の脂肪細胞分化抑制制御機構の解明を進めて行く。また、高脂肪食を負荷したTob2 KOマウスを用いて、糖・脂質代謝への影響を調べる。Tob2が脂肪組織形成を制御することにより、糖・脂質代謝に影響を与えることが示されれば、Tob2を標的とした分子標的治療薬につながることが期待される。
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