研究課題
特異な反強磁性一強磁性転移を示すFeRh規則合金に、強磁性体からスピン偏極電子を注入することでs-d交換相互作用を変調し、スピン注入に伴う磁気相転移を誘起することを試みた。具体的には、マグネトロンスパッタリング法で作製したFeRh薄膜を電子線リソグラフィーを用いて細線構造に加工し、さらにスピン注入源としてCo細線配列を接合した試料に対して電流-電圧特性を測定することで、Coからのスピン注入がFeRhの磁気相転移に及ぼす影響を調べた。また、通電することで生じるジュール熱による温度上昇の効果を見積もるために、Coを非磁性体であるCuに置換して同様の実験を行った。その結果、スピン注入した場合において、より低電流密度でFeRhの磁気相転移が誘起されることを見出した。これはスピン偏極電流がs-d交換相互作用を変調したことに起因すると考えられる。一方、FeRh中のスピン偏極率を、半導体量子井戸を利用して評価するためにはFeRhの磁気相転移温度を制御する必要がある。本研究では、FeRhの磁気相転移温度を制御するためにPdを置換したFeRhPd薄膜の作製条件の最適化を試みた。現在のところ、わずかに相転移温度が低下する傾向が見られるものの、300K以下の温度まで制御できるまでには至っていない。また、FeRh薄膜に微量に含まれるγ-FeRh相を除去するために、2元同時蒸着MBE法によるFeRh薄膜の高品質化にも着手している。
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Journal of Applied Physics
巻: 109 ページ: 07C717-1-07C717-3
巻: 109 ページ: 07C911-1-07C911-3