研究課題
FeRh規則合金の反強磁性一強磁性転移温度が、基板との格子不整合に起因した格子歪によって変調可能であることから、BaTiO_3の構造相転移を利用した格子歪制御によって磁気転移を制御することを試みた。FeRhの磁気転移温度は400K付近でありBaTiO_3の構造相転移温度では反強磁性状態が安定である。そこで3元同時蒸着MBE法を用いてGaを添加し磁気転移温度を下げることで強磁性状態をより安定化させ、磁気状態に格子歪の影響を反映しやすい状態にしたFeRh合金をBaTiO_3基板上に成長し、磁化の温度依存性を測定したところ、特に冷却過程において290K付近及び190K付近に磁化の大きな変化が見られた。これらの温度はBaTiO_3の正方晶から斜方晶、斜方晶から菱面体晶への相転移温度にそれぞれ一致する。特に190K付近では磁化の大きな減少がみられた。この変化前後の温度で磁化の磁場依存性を測定したところ、飽和磁化の値が減少していた。これは、BaTiO_3の斜方晶から菱面体晶への相転移に伴い界面歪変化によってFeRhに強磁性から反強磁性への磁気転移が誘起されたことを示唆している。一方で、290K付近では磁化が増大したが、磁化の磁場依存性においては飽和磁化の値は変化していないことから、BaTiO_3の正方晶から斜方晶への相転移に伴うFeRhの磁気異方性の変化を反映したものと考えられる。以上よりBaTiO_3の構造相転移を制御することでFeRhの磁気状態が制御可能であることを実証することができた。しかしながら、高品質なFeRh規則合金薄膜の作製には高温下での成長が必須であるため、GaAs上へのFeRh合金の成長は困難であり、GaAs/AlGaAs量子井戸を利用したFeRhから半導体へのスピン注入は達成されなかった。
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Journal of Applied Physics
巻: 113 ページ: 17C713-1, 17 C713-3
10.1063/1.4795819