研究課題
鉄系超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体以来の、超伝導転移温度(T_c)が50Kを超える、新しい高温超伝導体として非常に注目されている。鉄系超伝導体は、100T級の高い上部臨界磁場を有するとともに、超伝導特性の異方性が小さいなど、従来の銅酸化物超伝導体より優れた特性を有している。本研究では、鉄系超伝導体の応用を目的として、高品質なエピタキシャル薄膜を作製し、超伝導デバイスの試作を行った。本年は、Co添加BaFe_2As_2薄膜において、バイクリスタル粒界を障壁層として用いたジョセフソン接合素子を作製し、それを用いてSQUID動作の実証を行うことを目的とした。バイクリスタル粒界でのジョセフソン効果を観測するためには、臨界電流密度J_cが1MA/cm2を超える高品質な薄膜を作製する必要があった。薄膜はパルスレーザー堆積法により作製しているため、薄膜品質は焼結体純度に寄るところが大きい。そこで、徹底的に高純度化し、不純物を全く含まない単一層の焼結体を用い、さらに成長温度の均質性の改善も行った。薄膜のT_cは22.6Kで、超伝導転移幅が1.1Kと急峻になり、超伝導特性の均質性が改善された。さらにこの薄膜は、4Kにおいて、Jc=4MA/cm^2を示し、今なお、トップデータを維持している。これらの高品質エピタキシャル薄膜をバイクリスタル基板上に作製し、幅10μmのジョセフソン接合素子を作製した。細線を流れる超伝導電流は、バイクリスタル粒界で明らかに抑制され、磁場印加により、J_cがほぼゼロまで抑制されたことから、バイクリスタル接合部がほぼ100%のジョセフソン電流で支配されていた。次に、そのバイクリスタル粒界を二つ含むように、超伝導ループ(SQUID素子の構造)を作製した。磁場印加により周期的な電圧の振動が観察され、SQUIDとして動作した。これらは、世界初の超伝導デバイスの試作になった。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Supercond.Sci.Technol.
巻: 24
Appl.Phys.Lett.
巻: 96
Appl.Phys.Express
巻: 3
巻: 23
Crystal Growth & Design
巻: 10 ページ: 1084-1089
Mater.Sci.&Eng.B
巻: 173 ページ: 244-247
Thin Solid Films
巻: 518 ページ: 2996-2999
http://www.khlab.msl.titech.ac.jp/~www/