研究概要 |
超伝導の発見から100年が経過する今日においても,その機構や性質の解明は未だ完全とは言えない.本研究では特に,強相関電子系における超伝導のペアリング対称性を理論計算に基づき明らかにしてきた.強相関電子系では,複雑な電子相関が様々な機構や性質をもつ超伝導を引き起こすとされていて,その理論的な解明が必須となっている.ペアリング対称性は,超伝導の機構や性質を大きく反映したものになっていて,それを理論的に導くことは有益である. 平成22年度において本研究では,具体的に以下のような研究を実施し成果を挙げた. 【1】擬一次元強相関電子系における超伝導のペアリング対称性(拡張ハバード模型+乱雑位相近似) 一次元性とスピン揺らぎ/電荷揺らぎの強弱の兼ね合いで,擬一次元強相関系では4つのペアリング対称性(偶周波数スピン1重項d波,偶周波数スピン3重項f波,奇周波数スピン1重項p波,奇周波数スピン3重項s波)が競合することを明らかにした.この結果は有機化合物等に見られる擬一次元超伝導体のペアリング対称性決定の指針となる. 【2】反強磁性と共存する超伝導のペアリング対称性(ハバード模型+乱雑位相近似) 反強磁性秩序がバックグラウンドにあると電荷揺らぎが増強され,奇周波数スピン3重項s波がペアリング対称性の候補となり得ることを明らかにした.この結果は重い電子系化合物等に見られる反強磁性/超伝導共存系のペアリング対称性決定の指針となる. 【3】電荷秩序系とのヘテロ界面におけるペアリング対称性(拡張ハバード模型+乱雑位相近似) スピン揺らぎ/電荷揺らぎ共存下でのヘテロ界面におけるペアリング対称性の混ざりを明らかにした.
|