研究課題/領域番号 |
10J08429
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
重田 啓介 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 超伝導 / 強相関電子系 / ペアリング対称性 / 理論 |
研究概要 |
超伝導の発見から100年以上が経過する今日においても、その機構や性質の解明は未だ完全とは言えない。本研究では特に、強相関電子系における超伝導のペアリング対称性を理論計算に基づき明らかにしてきた。強相関電子系では、複雑な電子相関が様々な機構や性質をもつ超伝導を引き起こすとされていて、その理論的な解明が必須となっている。ペアリング対称性は超伝導の機構や性質を大きく反映したものになっているため、それを理論的に導くことは有益である。 平成23年度において本研究では、具体的に以下のような研究を実施し成果を挙げた。 【1】交替磁場下の超伝導 交替磁場下の超伝導がもつペアリング対称性を、理論計算(Hubbard模型+乱雑位相近似、揺らぎ交換近似)に基づき明らかにした。交替磁場により電子はスピンに依存した密度変調を起こし、電荷揺らぎを増強させる。その結果そこで起こる超伝導は非従来的なペアリング対称性(奇周波数スピン3重項s波)を持ち得ることが分かった。重い電子系化合物や多層型銅酸化物等の一部の物質では、反強磁性と超伝導の共存が実験に基づき報告されている。本研究で得られた結果は、これらの物質における超伝導の発現機構を解明する上で重要な役割を果たし得る。 【2】スピン軌道相互作用が働く系における超伝導 スピン軌道相互作用が働く系における超伝導のペアリング対称性を、理論計算(拡張Hubbard模型+乱雑位相近似)に基づき明らかにした。スピン軌道相互作用が働くと、超伝導のペアリング対称性は混合状態になることが知られている。本研究では従来よりも精度の高い計算を行うことで、より正確な混合状態を得ることに成功した。本研究で得られた結果は、強相関電子系のヘテロ接合界面で起こる超伝導の理解に重要な役割を果たし得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「スピン軌道相互作用が働く系における超伝導」について、困難が予想された定式化とプログラム作成に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
得られた計算結果について、より深い考察を行っていく。それに付随して、適宜追加計算を行っていく。「スピン軌道相互作用が働く系における超伝導」については、論文としてまとめていく。
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