研究課題/領域番号 |
10J08444
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 有沙 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | サーカディアンリズム / 概日時計 / クリプトクロム / ノックインマウス / リン酸化 / 視交叉上核 / キナーゼ / プロテアソーム分解 |
研究概要 |
CRYタンパク質は、E-boxを介した時計遺伝子の転写活性化を強力に阻害することにより、概日時計の発振において中枢的な役割を果たす。マウスのCRY2は、557番目のセリン残基(Ser557)のリン酸化に依存してプロテアソーム系を介した分解制御を受ける。本研究は、Ser557をAla置換した変異マウス(S557A-CRY2ノックインマウス)を用い、CRY2のSer557リン酸化の時計発振における役割の解明を目的とする。 本年度は、細胞時計のリアルタイム-モニタリング系を用いて肝臓時計の分子リズムを可視化し、CRY2のS557A変異による細胞時計への影響を調べた。その結果、変異ホモマウスの肝臓リズムは野生型マウスに比べて1時間以上長い概日リズム周期を示した。さらに、ノックインマウスの肝臓において、CRY2のみならず、その結合パートナーであるPER2タンパク質の核内量が顕著に増加していた。同様に、培養細胞を用いた過剰発現実験より、S557A-CRY2と共発現させたPER2タンパク質は核内量の割合が増加する一方、細胞質のタンパク質量の相対量は減少した。これらの結果より、S557A-CRY2ノックインマウスにおいてはCRY2の存在量が増加することにより、CRY2-PER2複合体の核移行が促進され、PER2タンパク質の局在が細胞質から核に偏ると考えられた。 一方、cry1ノックアウトマウスとS557A-CRY2ノックインマウスを交配させ、CRY1の寄与を排除した変異個体の輪まわし行動リズム解析を行った。この二重変異マウスは、cry1ノックアウトマウスに比べて長周期の輪まわし行動リズムを示したが、その差は野生型マウスとS557A-CRY2ノックインマウスの行動リズム周期の差とほぼ同程度であった。このことから、CRY1によるCRY2のS557A変異の相補はないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載したとおり、細胞時計のリアルタイム・モニタリング系を用いてS557A-CRY2ノックインマウスの肝臓時計を可視化し、末梢時計と中枢時計の比較解析を行った。cry1ノックアウトマウスとS557A-CRY2ノックインマウスの交配および二重変異マウスの行動リズム解析も終了した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載のとおり、Fbxl3ノックアウトマウスを用いた解析を展開する。具体的にはS557A-CRY2ノックインマウスと交配させた二重変異マウスの行動リズム解析を行い、CRY2の2種類の分解系を阻害したときの行動リズムへの影響を明らかにする。 また、これまでの研究でFbxl3のホモログであるFbxl21のノックアウトマウスの表現型解析を行い、FBXL21がCRYタンパク質の制御に関与することを示唆するデータを得ている。そのため、今後はFBXL3に加えてFXBL21の機能解析を行い、CRYの分解制御機構の全体像を明らかにする。
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