銀河や星などに代表される現在の宇宙の非一様構造の素である宇宙初期揺らぎが、宇宙誕生後のごく初期にどのように作られたかは未だ分かっておらず、多数の理論モデルが存在する。当該年度の研究成果は、宇宙論的摂動論を駆使して、初期揺らぎの三点相関関数と四点相関関数の関数形を特徴づけるパラメータの間に、それぞれの理論モデルごとに固有の関係式が成り立つことを示し、現在までに知られている有望な理論モデル全てに対して、網羅的に固有関係式を導いたことである。そして、今後の宇宙背景放射温度揺らぎの三点相関と四点相関の精密観測から、どの関係式が成り立っているかが検証できれば、宇宙初期揺らぎの起源を同定することができることも示された。初期揺らぎの非ガウス性の観測から、初期揺らぎの起源に迫る研究は、ここ10年間で急速に進展しているが、三点相関と四点相関の間に成り立つ固有の関係式を使って、理論モデルを観測から検証するという新しい観点を提唱した点で、この研究は意義がある。また、本研究で与えられた三点相関と四点相関の間に成り立つ関係式のリストは、今後観測から理論モデルを制限あるいは同定する研究にとって、非常に役に立つものであると考える。
|